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中国、レアアース禁輸で日本を脅すも自滅へ。習近平が恐れる日本の「切り札」とは=勝又壽良

高市首相の台湾海峡をめぐる発言が、中国の猛反発を呼んでいる。駐日大阪領事の過激投稿から水産物禁輸、観光客の訪日自粛要請まで、習近平政権は「戦狼外交」をエスカレートさせている。だが、中国の「威嚇」には大きな脇の甘さがある。日本は半導体素材という「反撃力」を持っているのだ。(『 勝又壽良の経済時評 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)

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プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

「日本批判」で足並みを揃えたい中国

高市首相の台湾海峡をめぐる発言が、中国の猛反発を呼んでいる。中国の駐日大阪領事は、日本が台湾問題で首を突っ込んだら、高市氏の「首を切れ」などと過激な投稿をして日本の強い反発を招いた。この過激投稿は、中国政府承認の下で行われたと米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月21日付)が報じた。投稿は、すぐに削除されたが、中国政府の情勢見誤りは明らか。日本が、中国の威嚇に屈するとみたのだろう。

中国は、日本へ強い姿勢で当たれば「高市批判論」が高まると期待している。中国外交部を筆頭に、商務部、国家安全部、人民解放軍まで日本非難の「隊列」に加わっている。これは、習近平国家主席が日本批判の先頭に立っていることを示唆するものだ。習氏は今夏、辞任説が飛び交った。習氏の権力基盤が、経済混乱で揺らいだ結果であろう。この騒ぎが収まったのは、反習派との妥協の産物に違いない。こうした事情を背景にして、今回の「高市発言」が飛び出した。

習氏は、これを捉えて自らの弱体化した政権立直しに利用している。「日本批判」で足並みを揃えさせ、自らへの忠誠を誓わせたのであろう。駐日中国大使館は、旧敵国条例を引っ張り出して、「無通告で日本を攻撃できる」とXにまで投稿するほど、見境がなくなっている。

何が、ここまで中国を「狂わせた」のか。経済的行き詰まりをカムフラージュする目的である。内外の関心を逸らしたいのだ。

1つ注目すべき現象はまだ、中国国内で官製デモを組織していない点だ。13年前の尖閣諸島の日本国有化(2012年)では、大々的な官製デモを組織させた。デモ参加者には、政府が日当を支給したのだ。今回は、こうした官製デモが姿を現さないことの裏に、国内不況の深刻化がある。若者失業率がようやく18%を割った程度で、依然高水準である。この段階で、官製デモを組織させれば、一気に「反政府デモ」で火がつきかねない。そういう大きなリスクを抱えているのだ。

不況下で官製デモ不発

不況下だけに、習氏は官製デモの組織化へ慎重にならざるを得ない。せいぜい、日本への渡航や留学について、日本国内の「治安問題」をねつ造して、中国人の足止めを狙って嫌がらせを狙っている。日本は、世界有数の治安良好国とされている国だ。中国人の訪日客が、日本の安全さには一様に感歎している。習氏の迷妄を醒ますために、日中の治安状況を比較しておこう。

    殺人発生率  暴行発生率   傷害発生率  強盗発生率  
中国  0.58件   50~70件  30件前後  1.5件
日本  0.23件   34件     15件    0.5件
(注) 2023年現在 人口10万人当たり発生件数
(出所)日本『法務省 犯罪白書』(令和6年版)

日本は、全体的に暴力犯罪の発生率が低く、殺人・強盗・傷害の事件は世界的にも少ない水準である。中国は、都市部(例:広州、重慶)での暴力事件が多く、農村部では統計が不明瞭なこともあり、実態把握が難しい。中国の治安当局は、政治的安定を誇張する傾向があり、統計の透明性や報道の自由度に制限があるため、公式データの信頼性には注意が必要だ。日本の治安は、客観的に見て非常に良好だ。中国が、「治安の乱れ」を理由に観光や留学へ「難色」を示すのは、ジェスチャーに過ぎない。

次に、日本での外国人刑法犯検挙人員は、次の通りである。

順位  国籍   検挙件数   検挙人員数   主な犯罪
1位 ベトナム  3,130   836     窃盗・詐欺
2位 中国    1,039   571     詐欺・傷害
3位 ブラジル   229   122     暴行・窃盗
4位 フィリピン  203   148     薬物・暴行
(注)2024年現在
(出所)警察庁 犯罪統計資料

ベトナム人の検挙件数が、最多である。特に窃盗や詐欺が多い。技能実習制度との関連が指摘されている。中国人は、詐欺や文書偽造など知能犯の傾向が高く、組織的な犯罪が含まれる。フィリピンやブラジルは、薬物・暴行などが目立つ。

中国政府は、日本の治安不安を吹聴するが、データでみれば全くのねつ造だ。日本からみた中国こそ「犯罪大国」である。この中国が、日本へさらなる「挑戦」を予告している。中国商務省は11月20日、「日本は、『誤った言動』を撤回すべきだと表明。同省の何永謙報道官は『高市首相の誤った発言は中国国内で強い民意の反発を招いている』と述べ、『日本は、国民感情を傷つけながら利益を得ようとすることはできない』とも語った。これは、日本への新たな経済制裁を予告しているように受け取れる。

中国官営メディア『環球時報』(11月20日付)論評で、日本に対するさらなる圧力措置を加える可能性があると警告した。「中国の道具箱には非常に豊富な選択肢があり、中国の核心利益を損ねるいかなる行為も、必ずそれに相応する代償を払うことになるだろう」と警告した。

これは、レアアース(希土類)の対日輸出停止を示唆している。

Next: レアアース禁輸もありえる?首が絞まるのは中国側の可能性…

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